たとえば第2次大戦時にドイツの海軍から空軍にまで採用されて発展したチュチマ、ベトナム戦争時に米空軍のパイロットたちが愛用したグライシン、米軍の定める軍需規格に基づいて開発されて実際に制式採用されているトレーサーなど、実際に戦地で使われてきた時計たちは、やはり現行モデルもモノとしての風格に満ちている。それは実際に使った兵士たちの声を受けて進化していったからであり、そうした背景があることが魅力につながっているのだ。
【見やすさを突き詰めたデザイン】
ミリタリーウオッチの最も重要な要素は、一瞬で時刻が確認できることだ。特に戦闘時には長時間時計に視線をやっているわけにはいかないので、ぱっと見てすぐに読み取れるように黒文字盤に白インデックスというコントラストの高い配色が多く、インデックスもはっきりとした見やすいフォントが用いられる。照明のない暗闇でも見えるように、最先端の夜光塗料が用いられることも多い。
今回はそんなミリタリーウオッチの当時の意匠をしっかりと再現しながらも、価格は5万円以下という値頃感のあるモデルを選出している。
復刻ミリタリーモデルに興味がある人は、ぜひ購入する際の参考としてもらいたい。
まず紹介するのがBENRUS(ベンラス)のTYPE-Ⅰだ。
BENRUS(ベンラス)は、1921年にニューヨークで設立されたウオッチメーカー。同社を一躍有名になったのが、政府御用達として軍用時計を生産したベトナム戦争である。第二次大戦後の急激な景気回復、需要の拡大の波にも乗り、時計コピー機械の調達に苦しむメーカーが多いなか、ベンラスを立ち上げた当初から使い続けたスイスメーカーとの太いパイプのおかげで、その需要を一気に飲み込んで急成長を遂げた。一時はアメリカの３大メーカーの１つになるほどの勢いを見せたという。
そんなベンラスが復刻したのが、このTYPE-Ⅰだ。オリジナルモデルは1970年代、米軍のUDT(水中破壊工作部隊)、CIAエージェント、ネイビーシールズ、および深海潜水や特殊部隊の現場の特殊工作員に提供できる非常に堅牢な時計として、製造された由緒あるミリタリーウオッチ。今回の復刻モデルではデザイン面を当時の資料をもとに可能な限り忠実に復刻している。